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最高裁判所第一小法廷 平成6年(行ツ)220号 判決 1995年11月09日

東京都江東区亀戸一丁目三八番六号

上告人

新住宅工務株式会社

右代表者代表取締役

渡部憲治

右訴訟代理人弁護士

芦田浩志

東京都江東区亀戸二丁目一七番八号

被上告人

江東東税務署長 武田勇

右指定代理人

泉本良二

右当事者間の東京高等裁判所平成四年(行コ)第一三七号法人税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が平成六年七月一八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人芦田浩志の上告理由書(第一)、同(第二)及び同(最終)記載の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って原判決の法令違背をいうか、原審の判断と関係のない事項を挙げて原判決の不当をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井嶋一友 裁判官 小野幹雄 裁判官 三好達 裁判官 高橋久子 裁判官 遠藤光男)

(平成六年(行ツ)第二二〇号 上告人 新住宅工務株式会社

上告代理人芦田浩志の上告理由

○ 上告理由書(第一)記載の上告理由

上告人の上告理由は左記の三点とする。

第一点 民訴法三九五条一項一号、民訴法三九六条、同法三八七条、憲法八四条、憲法二九条違反

第二点 民訴法三九五条六号、憲法八四条、憲法二九条違反

第三点 国税通則法二四条、同法二五条、同法二六条、法人税法六六条、同法六七条その他本件に適用さるべき関係国税諸法令の憲法八四条の適用の違憲、憲法二九条違反

右中第三点が最終論点だが、第一、二点は第一乃至第三点に共通の上告人の本件係争にかかる根幹的(骨格的)主張を民訴法の手続法的制約を考慮しつつ述べる。

第一点 原判決の民訴法三九五条一項一号、民訴法三九六条、同法三八七条、憲法八四条、憲法二九条違反

第一、上告人は、本論点にかかり、左記を主張する。

一、上告人の本件論争にかかる根幹的(骨格的)主張

二、民訴法三九五条一項一号の法意と本件原判決の非弁論主義の違法の関係

三、本件上告審の調査の範囲と国税不服審判所が作出した虚構の再調査との関係

第二、上告人の本件係争にかかる根幹的主張

一、本書面における根幹的主張の意味

上告人は本書面で「根幹的主張」の用語を本書面冒頭部分と第一点中第一、一の部分の二か所で述べ、右後者では、根幹的(骨格的)と表現した。

右にいう「根幹的」を「枝葉末節的」の反対語の意味で述べることとする。国語的な表現としては、「基礎的」という用語は、「基礎」をある国語辞典でその意味を確かめると、「<1>建物などの土台。<2>物事がなりたつためのもと。」と、二様の意味に使われている。民訴法は、訴(第二編第一章の見出文言)の初条(二二三条)に〔訴提起に方式〕について定め、「訴状には、当事者、法定代理人並びに請求の趣旨及び原因を記載することを要す」とし、二三二条に、「原告は請求の基礎に変更なき限り口頭弁論の終結に至るまで請求または請求の原因を変更することを得、但しこれにより著しく訴訟手続を遅滞せしむ場合にはこの限りにあらず。」とする。民訴手続も訴の提起から判決確定に至る一つの「物事」であって、その経過は訴訟記録として可視的なものである点では建築と同じであって、建物建築は、定礎がなければ始まらないし、建築物は、竣工がなければ、人に帰属し、使用に供されないことに例えて、訴訟手続上の用語として、請求及び請求の原因よりも広い事実概念とし請求の基礎なる語が用いられる、と上告人は解するのである。

右観点から、上告人は本書面で、「根幹的」という用語を植物に例えれば人為的に建築上基礎の位置を定めるよりももっと根深く根付き日月の経過で多年的に生長する立木を枝葉をふくめて自然的及び人為的阻害から保全する当該立木の根と茎のより強靱な部分の根源部分を係争における主張の根幹的なもの、の用語を用いることとしたものである。

なお同様の比喩的方法から(骨格的)を用いたが、本理由書は国語学上の文書ではないので、以下では、この用語は用いない。

二、上告人のいう根幹的主張の内容

上告人は、左記主張を上告理由の理由事由の根幹事由とする。

1、本件係争は、原判決の事実摘示中本件土地と略称された、公簿上港区赤坂三四五の宅地この地積二一五・四七m2について、上告人が所有者大都工業と、当該土地の宅造、宅造地に上告人の計算において建物を建築、これを本件土地と一体的に売却して、大都工業に対する代金の支払を決済する、左様宅造業務、宅地建物取引業務を、昭和五五年三月一日先ず大都工業の同意を得て開始したことに伴う、同年七月二九日の二五〇〇万円の支出行為に関して、被上告人というより被上告人のため国税不服審判所が作出した虚構によって、被上告人が国税の賦課徴収に名を借り、憲法八四条に違反して上告人の営業の自由、権利を侵害して上告人から金二四二万六八〇〇円と右に附帯する金員を違法に国庫に収奪しようといている、として上告人が司法裁判所に司法救済を求めている案件なのである。

2、上告人が原審でした新たな主張は、平成五年二月八日付準備書面でした、同準備書面二の1、2に要約されている。

国税の賦課徴収は、国庫と納税者の関係で見れば、1は、当該事物にかかる納税義務者は誰かにかかり、賦課徴収者が錯誤した、いわば人違い徴税の違法をいうもので、直接的な憲法二九条違反でもあるが、租賦課徴収者の国税賦課徴収法令の適用の外形をとった不法行為として行われたものであるので、憲法八四税条同法二九条違反をいうものなのである。具体事実は次項で述べる。

右準備書面二の2は、納税義務者上告人が行った、「一定の継続事実を数事業年度にわたり行った損益の各事業年度への帰属を七年前に遡って変更させるような計算否認の税法の適用」の、憲法八四条憲法二九条違反をいうもので、第三点でこれを具体的にいうこととする。

ただ、右1にいう人違い徴税の、「納税義務の自覚をもって営利の結果、乃至損失を得たその結果について当該担税主体に対して行うべきであるのに、」という「当該担税主体」である上告人が人違いされた者であり、「本件の場合の様に明らかに利益が発生した者への課税ははじめから何ら追及しないで、」の「明らかに利益が発生した者」とは、富士建、上田、株式会社寿々企画(右三社を富士建、上田らという)をここではいうものだが、しかし、租税法にいう実質課税の原則からすると、富士建、上田らは本件土地の大都から富士建、富士建から鹿友信販へ移った物件取引でいかなる利益を得たかといえば、甲五四号証の上田修の平成五年七月一〇日付陳述書五項によれば、「別添土地売買契約書の代金壱億九〇〇〇万円と前記八千七百八拾五万四千円(代理人注・大都の本件物件売上代金)と五千参百四拾万円を差引いた残金四千八百七拾四万六千円は、以前より友野氏に貸しがあり買手の鹿友信販を付けた安斉某氏と友野氏に渡して終わり、私は手形の裏書代金として金参百万円位を謝礼としてもらっただけです。」とあるのである。

右陳述書四項五項記述自体で、本件土地所有権が大都から富士建経由で鹿友信販に渡ったについて大都を代行して契約の場所に登記済権利証、実印、印鑑証明書を持っていって契約を完了させたのは上告人会社代表渡部であることがわかる。これは本書面第三点の重要な証明資料事実である。

そして上田の役割は何かといえば、友野とともに、上田は手付け金二千万円と残金中二八七四万円の帰属をあいまいにするにあった。事実は、その契約の場に来なかった人物、つまり、安斎某に使途不明金が渡った由である。

上告人代表者渡部と上告人代理人は、新宿区市谷の代理人事務所で、右甲五四号証を上田に作成してもらったのだが、その際、右安斎某は某体育団体の役員で、オリンピックに選手を引率したりする有名人であると友野から聞いている、と聞いた。

その際また代理人は手形に裏書きして現金化したのは、鹿友信販の本店(千代田区内神田)すぐそばの貸金業者の店に契約調印後直に行って、即時現金にして友野がそれを受取り、三〇〇万円位の手形裏書代六条、同法三八七条違背をいうものである。

以上

○ 平成六年九月三〇日付け上告理由書(第二)記載の上告理由

三、申立事項について裁判を脱漏し申立事項の反対事項についてのみ裁判した判決の違法と、右違法の指摘があり、その重大かつ顕著であることの主張とその主張立証に不可欠に必要であるとして当該証拠を申出たのにこれを取調べず、かつこれを申出た時点で受訴裁判所を構成した裁判官二名が右申出の次回口頭弁論期日前に他に転出、当該口頭弁論期日では新任の裁判長は開廷後裁判所の構成が変わったとし、当事者双方に従前の口頭弁論の結果陳述を求めたまま訴訟がまだ判決に熟さないのに口頭弁論の終結を宣することの民訴法一八六条、一九五条その他の民訴手続法令違反と弁論主義(民訴法一八五条)、直接主義(民訴法一八七条)との関係

1、初審裁判所への申立事項

上告人は、本件初審判決は、民訴手続法との関係でいうと申立事項について裁判を脱漏した違法があったというべきである、とするものである。

すなわち、憲法二〇条、八四条に照らし、納税者である上告人に対する被上告人の本件国税にかかる調査更正賦課決定並びに徴税をめぐる法律関係の係争に関する平成二年四月一六日の本祖提起時の被上告人に対する上告人の主張は、左記五個の請求を請求の原因とするものであったのに、本件初審裁判所は右申立事項につき、裁判を脱漏した。

(一) 昭和五六年三月の、被上告人の昭和五五、五四、五三年各七月期の調査の、左記不全

ア、五五年七月期(三〇年間)の決算書、貸借対照表(甲一六号証の二)資産の部(流動資産)に掲記ある金の謝礼金をもらったと聞いた。

なお、右上田による甲五四号証作成の代理人事務所における代理人、渡部、上田の面談の機会に上田、富士建は本件土地にかかる近隣関係者との折衝の開始の昭和五四年五月一日以降(富士建、上田の場合)以降昭和五八年一二月一八日までの間宅地建物取引業者の免許を有していなかったことを確認した。

さらに付言すれば、上告人は右時点でも、その後も、富士建を本件物件を売った相手の鹿友信販に対しいくらで売ったのか聞かなかったし、また甲五四号証に添付の乙一〇号証の契約書は見ていない。

また、実際は一億九〇〇〇万円だった代金中から渡部が受け取った上告人分五三四〇万円と大都分八七八五万四千円のほか上田がいくらの報酬金乃至手数料を買主側から受け取ったか確かめていない。ただ、ごくわずかしかもらっていないと聞いていただけであった。

その他右に関連する計算関係事実は後述する。

3、本項1、2で述べたことをもう一度結論的にかつ通俗的な用語でいえば、第一審判決は上告人が申立てた事項について何ら判断せず、単に国税不服審判所が作り上げた虚構をその文脈まで借りて繰り返しただけなのである。何故国税不服審判所が作り上げた虚構と言うかといえば、原処分庁はそんなことは言っていなかったからである。原処分庁は否認にかかる二五〇〇万円の支出は、支払ったとする証拠を提出せず、かつその支出目的及び支出先を明らかにしていない、としていただけなのである(乙一号証五頁)。

上告人の本訴の提起は、乙一号証がした計算は、計算主体の選定を誤り、かつ計算の方法に適用すべき法例の選択を誤って、上告人の財産権を憲法二九条に違反し侵害して第一審判決挙示の金員を国庫に収奪しようとするものであり、第二審判決は、これをオウム返しに繰り返しただけであり、原判決は到底破棄を免れないとするものである。以下の本書面本論点二、三で原判決の民訴法三九五条一項一号、民訴法三九六条、同法三八七条違背をいうものである。

以上

○ 平成六年九月三〇日付け上告理由書(第二)記載の上告理由

三、申立事項について裁判を脱漏し申立事項の反対事項についてのみ裁判した判決の違法と、右違法の指摘があり、その重大かつ顕著であることの主張とその主張立証に不可欠に必要であるとして当該証拠を申出たのにこれを取調べず、かつこれを申出た時点で受訴裁判所を構成した裁判官二名が右申出の次回口頭弁論期日前に他に転出、当該口頭弁論期日では新任の裁判長は開廷後裁判所の構成が変わったとし、当事者双方に従前の口頭弁論の結果陳述を求めたまま訴訟がまだ判決に熟さないのに口頭弁論の終結を宣することの民訴法一八六条、一九五条その他の民訴手続法令違反と弁論主義(民訴法一八五条)、直接主義(民訴法一八七条)との関係

1、初審裁判所への申立事項

上告人は、本件初審判決は、民訴手続法との関係でいうと申立事項について裁判を脱漏した違法があったというべきである、とするものである。

すなわち、憲法二〇条、八四条に照らし、納税者である上告人に対する被上告人の本件国税にかかる調査更正賦課決定並びに徴税をめぐる法律関係の係争に関する平成二年四月一六日の本祖提起時の被上告人に対する上告人の主張は、左記五個の請求を請求の原因とするものであったのに、本件初審裁判所は右申立事項につき、裁判を脱漏した。

(一) 昭和五六年三月の、被上告人の昭和五五、五四、五三年各七月期の調査の、左記不全

ア、五五年七月期(三〇年間)の決算書、貸借対照表(甲一六号証の二)資産の部(流動資産)に掲記ある「受取手形」二五〇〇万円の原因関係

イ、右貸借対照表の記載と、同年期の確定申告書付表「受取手形の内訳書」(甲一六号証の二)に富士建の上告人に対する五五年七月二九日振出、支払期日同年一〇月一五日、一一月一五日、一二月一五日、五六年一月一五日、二月一五日の各五〇〇万円、計二五〇〇万円の、いずれも支払場所舟橋信金の、手形が渡っている記載があるので、右手形が上告人に渡ったこと自体は、舟橋信金に聞くまでもなくアの決算書の記述自体で明白であったこと。

ウ、乙一号証によれば、上告人は、上告人の取引銀行である三井銀行錦糸町支店から二〇五〇万円の小切手の振出を受け、及び舟橋信用金庫本店からの四五〇万円の小切手の振出を受け、右両小切手を昭和五五年七月二九日富士建に渡し、右提示を受けてこれが小切手金を支払っていることが認め得たこと。

エ、甲三二号証の二によると、五五年九月二日、上告人は富士建から二五〇万円の手形を受取った。

オ、右結果として昭和五〇年一〇月七日現在二七五〇万円の手形を富士建から受取っていたこと。

同年一〇月七日現在というのは、上告人が甲三二号証の二の、経理部長西村雅男が現金書類伝票を拐帯して行方不明で、早急に本人を捜して書類作成の上申告に及ぶと被上告人に上申したのが右日だからである。

カ、右富士建からの手形の受取と富士建に対する小切手金の支払は、手形は支払にかえて振出されると支払いのため払出されると両場合があるが、銀行振出の小切手は、法人の出納経理上は現金と同じだから、手形の受取と小切手金支払いの関係は、金額の対比のほか原因関係の確定が必要であるところ、その後上告人が右同年一二月二三日に五五年七月期の申告をしたに伴い開始された調査では、以下キに述べる事由からして、受取手形の調査が不可避に要調査事項だったのである。

キ、五五年七月期の上告人の申告課税所得の計算上、上告人は、前半期(二九年期、つまり五四年七月期)末までにしていたはずの二五六三万二三〇二円の青色等欠損金(甲四七号証の一の<13>)中一三五四万一六二三円の控除(甲四七号証の<2>)を三〇年期(五七年七月期)にしており、控除し切れない損金二〇九万〇六七〇円が残っているものとして申告したこと、また甲四七号証の一が三〇年期(五五年七月期)の上告人の決算の貸借対照表資産の部には、流動資産中現金預金として二一一五万〇九三九円が計算されていたこと。

ク、五五年七月期の上告人の申告課税所得の計算は、五五年一二月二三日した確定申告書の別表一の(一)である甲四七号証の二の<2>でしていたこと。

その結果は課税申告所得は〇であったこと。

ケ、しかしながら、別表一の一だけでは、課税申告所得が〇円だったことは、別表一の一の27欄に一三五四万一六二三円の記載があること、うち六二三円は課税標準額の計算上は〇と見なすべきこと、28欄には二〇九万〇六七九円の記載があること、これも、下三桁の六七九円は〇とみなすべきであること。

甲四七号証の二は、原審では<1><2><3>の三枚一綴りしか提出しなかったが、上告人は右の他原審で甲四八号証の七、八の二枚、甲四八号証の九の一二枚中<1>を除く一一枚として写しを原審に差出していたこと、また別表三(二)土地の譲渡にかかる譲渡利益金額の計算書七枚も昭和五五年一二月二三日に被上告人には提出していたこと。

のみならず上告人は、以下に添綴する別表四(簡易様式)昭和五五年四月一日以後終了事業年度分他六枚に掲記の計算も五五年一二月二三日現在の申告の計算の一部としていたこと。

右六枚は初審並びに原審で写しを提出しなかったので、訴訟記録上は証拠調べの目的となってはいない。

しかし、他の六枚はいずれも申告上申告書に必要的に連綴さるべき様式文書なのであって、そのことは、例えば別表四、区分中36、「欠損金又は災害損失金の当期控除額一三五四万一六二三円は、その数字のまま、別表一の一(甲四七号証の一の一)に転記されていることからして明らかである。右計算を前提にしないと、欠損金または災害損失金の当期控除額一三五四万一六二三円の数字が出てこないのである。

(二) 昭和五六年三月の昭和五五年七月期の申告の計算にかかる調査の不全

既述の本項ア乃至ケの事実経過後開始された被上告人に所属の国税調査官早川某の調査は、甲四七号証の三、調査事項(修正分)と題するメモ文書に掲記されているとおり、昭和五五年七月期の申告書に上告人の納税意思の有無並びに課税標準額の計算について、五六年三月時点で調査に不全があった、と上告人はするものである。

(三) 昭和五五年七月期の国税の納付原因にかかる被上告人の判断の錯誤と右納付金収納の違法

上告人は、昭和五五年七月期の申告書の課税標準額の計算に錯誤があることを同年四月に入ってから気付き、昭和五六年五月一七日付で、昭和五五年一二月二三日提出した申告書に掲記の課税標準額の計算を修正する修正申告書を提出し(甲四八号証の四、甲四八号証の八の<1>貸借対照表、<2>損益計算書、<3>上告人代表者の別表三(二)にかかる上申書、<4>乃至<7>の別表一(一)まで)、その受理を得、翌同年五月一八日九〇万六五〇〇円を、日銀歳入代理人三井銀行錦糸町四により、国庫に納付した。

右納付の目的は、甲四八号証の八の<8>の納付書領収証書に記載あるように納付の目的は五五年七月期(三〇年期)の修正申告にかかるものであるのに被上告人はこれが領収証書に昭和五六年分法人税納付金として領収の記入をしたことが違法であることは明らかである。五六年七月期(三一年期)の申告期限は、右時期において未だ到来していないのにその納付義務が発生することはありえないのである。

(四) 昭和五五年七月期の国税の納付原因にかかる昭和五七年七月期の被上告人の再調査の違法

上告人は五五年七月期の法人税の申告、納付義務は、本項(三)に記述した昭和五六年五月一七日の修正申告と、同月一八日の九〇万六五〇〇円を国庫に納入したことで確定し、履行を終えた、とするものである。

というのは、右修正申告の修正点は、上告人が昭和五五年一月二一日時点で藤岡市南山に有した土地につき同年三月一日において、同旨から同旨の庚申山総合公園整備事業の施行目的で買取処分を受け、対価三〇三六万八四六〇円の支払いを受けたことについて、右代価から当該土地取得費を差引いた残金二六四三万八四二四円について特定事業の用地買収の特別控除二六四三万八四二四円が受け入れられたとの計算で、五五年一二月二七日の申告の計算がされたのである。

上告人は本項(三)で述べたとおり五六年四月、右特別控除の根拠法令である租税特別措置法六六条の二及び右条項関係法規の適用を受けるには難点があるとの結論に達し、本書面以下に添付する甲四八号証の八の<1>、<2>に連綴して修正申告時に被上告人に提出されたものであるので、これを本書面の以下に添付して提出する。

以上

(添付書類省略)

○平成六年九月三〇日付け上告理由書(最終)記載の上告理由

三、上告人は被上告人の本件処分に対し、これを不服として同税不服審判所長に対し審査請求の申立をしたものであるところ、被上告人は、上告人が昭和五五年七月二九日したとする富士建の二五〇〇万円の支出は、これがあったとする証拠を上告人は提出しなかったので、証拠がないものとして処分をしたのである、とした。

被上告人の右本件処分理由は、受訴願庁がした請求者処分者の乙一号証での主張摘示で明らかである。

上告人は被上告人右本件処分理由が違法として本訴提起に及んだのである。

そうであれば、訴状請求原因の記載その他弁論の全趣旨からして、初審裁判所は右上告人の主張を初審判決事実摘示に掲記し右申立事項につき民訴法一八六条により判決すべきところ、民訴法一九五条に違背し、右請求につき裁判を脱漏したとするものである。

そして上告人は、原判決をまた上告人の右主張につき事実摘示をせず、裁判を脱漏した違法があり、破棄を免れないとするものである。

四、上告人は被上告人がした五五年七月期の乙一号証で被訴願庁が当事者の主張として摘示したいわゆる前同調査で被告訴人が右二五〇〇万円につき赤坂工事の未成工事支出金の原価支出勘定に振替えた会計処理を認めたのに同処分のための調査では右認めた事実を否認したことは同一事項に対する重複調査で違法であるのでこれが取消を求めることを請求原因としているのに、右請求は初審判決でも原判決でも事実摘示に掲記せずまた右申立事項につき判決の脱漏があったとし三、同様の民訴訟に違背し違法であって、破棄を免れない、とするものである。

第二点

上告人は上告理由書(第二)頁に、三の標題としてのべたところは一般論だが、ここでは右一般論あてはまる事実が原審訴訟手続上にあった、とするものである。

即ち上告人が上告理由書七、八頁で概述した、上田修の平成五年七月一〇日付陳述書甲五四号証は、本件徴税が上告人のいわゆる人違徴税であるかどうかの、上告人がいう上告人の根幹的主張にかかわるものであるので、これが取調をした原審第五回口頭弁論期日で受訴裁判所を構成した裁判官三名中二名が第六回口頭弁論期日後第七回公判期日前に他に転出し、第六回口頭弁論期日で上告人がした証人上田修の証人申請の許否の裁判もないまま、第七回口頭弁論期日に前記標題にかかげ事実が具体的にあったこと口頭弁論期日上明らかで、右は右書証並証言の重要性、不可欠性に徴すれば、訴訟手続の弁論主義、直接主義に違背するものとして民訴法一八七条に違背し、訴訟が裁判をなすに熟しないのに判決した訴訟手続の法令違背があり、民訴法三九五条一号、同条六号にも違反した判決となって居り、破棄を免れない、と上告人は主張するものである。

第三点 国税通則法二四条、同法二五条、同二六条、法人税法六六条その他本件に適用さるべき関係国税諸法令の本件その適用の憲法八四条の適用の違憲、憲法二九条違反

一、上告人は、被上告人が当然のこととしていると推定し明示に初審及原審ではいわなかったが、法人税の賦課徴収上、上告人が一般建設業者としてその業務は建設業法のもとで行って居り、その計理は建設業法建設業法施行規則(昭和二四年建設省令一四号に準拠して行っている、ということを慮外においてはならない、ということを先ずいうものである。

また、昭和六〇年七月三一日当時は、昭和五七年九月二七日法務省令四二号株式会社の貸借対照表、損益計算書、營業報告書及び附属明細書に関する規則の特例に関する規則の適用をうけてその業務の会計処理をして来ていたが、昭和五五年七月三一日当時は、同名の法務省令があったが、その法令は右昭和五七年九月二七日法務省令四二号の制定に伴い廃止されたのである。

二、上告人の本件業務は昭和五五年三月一日本件土地について開始した時点では、宅造宅造地その建物建築、建築した建物と宅造地の一括売上だったが、昭和五九年一二月一八日、右業務を関係法令準拠して行ったが、当該土地が右業務の目的の用に供し得なくなってこれが完結の決算を六〇年七月期の決算でしたものである。

被上告人の処分は本項論点の特定の法令を違法に適用し、右業務開始から終了まで上告人の業務に阻害を年々結果として上告人の財産権を違法に侵害したもので、憲法八四条、二九条に違反し、破棄を免れない。

以上

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